第2図書係補佐

前回の「東京百景」の感想に続いて、今回も又吉本の感想。東京百景が予想以上に良くて、読み終わるまでに、又吉さんが書いた他の本も読んでみたくなり、第2図書係補佐をamazonで注文する事に。

東京百景は東京を舞台として、又吉さんの思い出深い街に纏わる話しを読む事ができたが、第2図書係補佐は又吉さんのお気に入りの本(計47冊)と絡めた話を読む事ができる。書評本ではなくて、東京百景のような短編エッセイのよう。

ただ、このようなスタイルで本が紹介されているのは、前書きにも触れられており、又吉さんなりの理由もあるようです。そして、『第2図書係補佐』刊行記念インタビューに書かれてある、本に興味を持ってるもらうための理由にも合致しているんじゃないかと思われます。なので、この本のタイトルが「第2図書係補佐」というのは、とても納得できます。

それはさておき、僕は又吉ファンとなりつつあり、ネット上の又吉さんのニュースを追いかけるようになったり、wikipediaのプロフィールを読んだりするようになった。

又吉直樹@wikipedia

小学生の頃から(寝屋川市立啓明小学校)サッカーを始め、中学校は寝屋川市立第五中学校に通い、高校時代は関西の強豪北陽高校サッカー部に所属し、左利きのため左のウィングバックをやっていた。

サッカーという名の神様では、小学生の頃に始めたサッカーに纏わる思い出エピーソードが5ページくらい書かれてある。上記のwikipediaの文を読むと、先天性の左利きなのか?と勘違いもできるんだが、この本によれば、元々は右利きで、利き足が変わった経緯が書かれてあった。なんかファンにはたまらない情報でしょう。で、そもそもこの本「サッカーという名の神様」ってどんなんやろう?と思うと4行程度…チラっと書かれてある(笑)

ちなみに、紹介されている本は、写真、値段、あらすじは書かれてあるので、興味があれば探しやすいっていうのもありがたいですし、僕も又吉さんが読んだ本を読んでみたいと思った。

そんな又吉さんは読書家としても知名度が高いですが、この本には、又吉さんの読書に関する話しが時折出てくるのが、いいですね。僕自身、読書が好きな人が、どんな考えで読書をしているのかとても興味があります。

僕が文学に求める重要な要素の一つが、普段から漠然と感じてはいるが複雑過ぎて言葉に出来なかったり、細か過ぎて把握しきれなかったり、スケールが大き過ぎて捉えきれないような感覚が的確な言葉に変えて抽出されることである。そのような発見の文章を読むと、感情の媒体として進化してきた言葉が本来の役割を存分に発揮できているということに感動する。

この本の最後には、中村文則さんとの対談が収載されており、こちらも読み応えがあるんですが、そこに本を読むきっかけとなった話しも出てきます。

又吉 中学校の時に芥川龍之介の『トロッコ』を読んで……すごいなと思ったんですよ。

又吉 初めて共感できたというか。それまで出会った本はーーもちろんいい話やったりはするし、僕が読み方がわかってなかったというのもあったので、今読んだら違う印象なんでしょうけどーーピンと来なかったんです。だけど、『トロッコ』を読んだ時に、主人公の男の子と全く同じ経験はしていないけど、経験したような感覚をその時初めて味わったんです。で、続けて、「羅生門」をよんだら、”あれ?これもほかとは違う”と思って。

インタビューにもありましたが、共有も大切にされているようで、こういう話しを媒体を介してでも共有できるっていうのは嬉しかったです。僕もこの話しと同じ感覚をトロッコで味わったので、これを読んだ時は驚きました。というか、トロッコのストーリー、普通に読むと何が面白いんだ?って感じなんですが、少年が家に帰るシーンは昔の過去が目の前で再現されたかのような…そして忘れていた記憶・感情が同時に蘇ってきたように感じました。一見ありふれた話しのようだけど…ここだけは半端じゃないんちゃうか?みたいな感想を持っていたんですね。

重要なのは何を感じるかだけだ。」と、又吉さんはブログでも述べていますが、第2図書係補佐を読めば、何かを感じる手掛かりになるかもしれませんね。

紹介されている本

■尾崎放哉全句集■昔日の客■夫婦善哉■杳子・妻隠■炎上する君■万延元年のフットボール■赤目四十八瀧心中未遂■サッカーという名の神様■何もかも憂鬱な夜に■世界音痴■エロ事師たち■親友交歓(ヴィヨンの妻より)■月の砂漠をさばさばと■高円寺純情商店街■巷説百物語■告白■江戸川乱歩傑作選■螢川・泥の河■中陰の花■香水 ある人殺しの物語■イニシエーション・ラブ■山月記(李陵・山月記より)■コインロッカー・ベイビーズ■銃■あらゆる場所に花束が……■人間コク宝■アラビアの夜の種族■世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド■銀河鉄道の夜■逃亡くそたわけ■四十日と四十夜のメルヘン■人間失格■異邦の騎士(改訂完全版)■リンダリンダバーソール いかす!バンドブーム天国■変身■笙野頼子三冠小説集■ジョン・レノン対火星人■夜は短し歩けよ乙女■袋小路の男■パンク侍、斬られて候■異邦人■深い河■キッチン■わたしたちに許された特別な時間の終わり■友達(友達・棒になった男より)■渋谷ルシファー■宇田川心中

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  1. 「まさかジープで来るとは」が文庫化された | Midnight Reading

    […] うですね。句とエッセイが追加され、俵万智さんが解説を書いているらしい。ピンで書いている本、第2図書係補佐、東京百景しか読んだ事がないので、そのうち購入しようと思います。 […]