中国古典は、はっきり言えば読まなければいけない本だと思う。昨今の日中関係や、中国の東シナ海の暴れっぷりのイメージから、なんだか印象が悪いような気もするが、中国古典そのものは、昔から読み継がれてきたものであり、北条政子や徳川家康は、貞観政要を愛読したとか、武田信玄の軍機に記されたといわれる「風林火山」は孫子からきている、江戸時代に三国志ブーム、ここ最近放映されたNHKの軍師官兵衛は如水とも呼ばれ、その語源も中国古典からきているらしい…中国古典の、このようなネタは、枚挙にいとまがない。管理職向けのビジネス書でも、引用先をはっきり明記しなくても、元を辿ればどこかで聞いた事がある言葉…と、中国古典が頻繁に参照されていたりして、結局、あれこれと中途半端なものを読むくらいなら、中国古典を読む方がいいのではないだろうか。

では、なぜ読み継がれてきたのだろうか?人々に消費されるものは、価値があるからだが、個人的には、中国古典には「答え」がわりと露骨に書いてあり、それが生活や身にしみるからではないかと思う。つまり、分かりやすいのだ。しかも、その書かれている内容の対象が、国、人、勝負ごと、人生や生活…と、分かりにくいものなのだ。分かりにくいものが、分かりやすく書かれてあるのはいいですよねよね。

インターネットが普及して、多様な価値感を目の前にした人達は、何が正しくて、何が正しくないのか…人とのつきあいに疲れるとか、まあ価値観の差異からくるストレスを受けやすい。人の言葉をいちいち気にしたり、挙句の果てに実生活でも左右されたり、とかく自分自身を見失いやすい。それは、分かりにくい対象には、指針となるものや、絶対的な正しさはないからだ。そして、肝心の自分には、信念がないからだ。確固たる基盤のある人間は強い。そして自信もある。人にも左右されない。そのような強さを求める人にも、中国古典は役立つと思う。

中国古典と言っても、たくさんあるので、一体何から読めばいいのか分からない。そんな時に、この中国古典名言事典から、手がかりを得てもいいと思う。

というか、この本自体がすごい。初版が1979年で、未だに再販されており、200におよぶ中国古典を8年の歳月をかけて、4800余の名言を精選し、さらに検索性を高め事典にした…って、もう偉業としか言えない。値段は2000円ではあるが、8年かけた仕事を、2000円で得られるって安いですよね。

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